社会福祉HERO’S

Uターン就職したのは障がいのある人たちが働く「リゾート施設」でした。
~就労支援‟カキ小屋”店長 三重野 孟さん~

先輩・同僚インタビュー

聞き手 相馬 2022.08.04

こんにちは!社会福祉ライターの相馬です。

私が働く社会福祉法人 博愛会は、大分県で知的障がいや精神障がいがある方を中心に、就労から生活まで、豊かな暮らしづくりをお手伝いさせていただいています。

さて、突然ですが「社会福祉法人」と聞いて、どんな職場を想像しますか?多くの方は入所施設や就労系事業所が運営するカフェやパン屋さん、室内作業所などを答えるでしょう。

実は博愛会は、リゾートホテルや地域で話題のお洒落なカキ小屋を運営しています。

今日は、これらを運営する博愛会の事業所「住吉浜リゾートパーク」で就労支援員として働く、三重野 孟さんとそのお仕事について深堀りしたいと思います。

三重野 孟(みえのたけし)さん

1985年、おんせん県の泉都、別府市生まれ。大学進学のため上京。大学では観光学を専攻。卒業後、他県の旅行会社に就職。その後地元大分へ戻り、再就職先を探すなかで見つけた「社会福祉法人が運営する総合リゾート施設」「障がいのある人たちが中心となって運営するホテル」に興味をもち、社会福祉法人博愛会「住吉浜リゾートパーク」に就職。現在10年目を迎える。

住吉浜リゾートパークについて

社会福祉法人博愛会が運営するシーサイドアクティビティパーク。敷地内では、リゾートホテル、海鮮レストラン(カキ小屋)、ゴルフ場、観光農園、キャンプ場があり、多くの観光客でにぎわっている。そして、そこは、障がいのある方が働く「障害者就労支援事業所」でもある。

 

相馬:早速ですが、大学時代の専攻を教えください。また卒業後はどのようなお仕事をされていたのでしょうか?

三重野さん:大学では国際観光学科に在籍し、観光学について総合的に学びました。卒業後はその経験を活かし、旅行会社に就職。佐賀県内で勤務していました。コース企画やカウンター業務、添乗業務を担当していました。

相馬:旅行会社を退職された理由や帰郷理由を教えていただけますか。

三重野さん:正直な話、方言を聞き取ることができなくて仕事にならなかったというのが大きな理由の一つです(笑)。お客さまの9割は年配の方で、コテコテの佐賀弁のため、商談は地元の方に間に入ってもらうレベルでした。同じ九州なのに言葉が全然通じなくて。
あとは「攻め」の営業スタイルの会社より「受け(入れる側)」の仕事をしてお客さまを喜ばせたいと思って。Uターンし、ホテル(住吉浜リゾートパーク)に就職しました。やはり地元大分、そして大分弁は落ち着きます。

相馬:現在は、どちらにお住まいですか?

三重野さん:勤務地と同じ杵築市内です。移住して12年が経ちます。幼少の頃、同市の山香町というところで数年暮らし、その時に経験した杵築の自然や暮らしが好きで、移り住みました。

相馬:三重野さんの現在のお仕事を教えてください。

三重野さん:主には「KITSUKI TERRACE(キツキテラス)」という地元の海産物をメインにあつかう海鮮レストラン(カキ小屋)の店長業務とリゾートホテル運営業務に携わっています。レストランもホテルも、障がいのある方が中心となって働いていて、彼らの就労支援も大事な仕事のひとつです。

ホテル業務では、フロントで予約受付や電話対応しています。営業も担当しており、コロナ前は海外(主に韓国や台湾)営業も行いました。

相馬:前職との違いや、前職の経験がいまに活かされていると感じる点を教えてください。

三重野さん:旅行会社では営業職。攻めのスタイルでお客さまを獲得する必要がありました。多忙で、日が変わるまで残業の日々。お客さまに心をこめて対応する余裕があまりなかったです。

現在キツキテラスでは、働く主役は「利用者さん」。そのサポートに支援者を配置しているため、余裕のある体制を築いています。お客さま一人ひとりにていねいな接客ができる余裕がある。それが前職との大きな違いです。

「攻め」の前職、「受け」の現職。その両方経験したいまだからこそ、旅行会社さんの要望や苦労も理解でき、冷静に対応ができていると思います。

相馬:キツキテラスは、自治体と積極的に連携して事業展開していると聞きました。地域活性化・地域貢献・地域連携の具体的な実践例や三重野さんが意識していること、めざしていることを教えてください。

三重野さん:キツキテラス単独での営業には限界があります。杵築市や地元の漁師さんの協力なしではここまでのお店に成長できませんでした。

たとえば杵築市では「杵築カキ街道」として牡蠣を取り扱う4店舗で協力し合う体制をつくり、市と協力してプロモーションすることで市内外のお客さまに周知することができました。地元の漁師さんや水産会社さんとも仕入れや販売の面で協力し、地元ならではのつながりを活かして「杵築カキ街道」を盛り上げています。

 

今後は新商品の開発を積極的に行い、飽きのこないレストランをめざしています。新商品のスイーツでは、地元杵築の抹茶やレモンを使用したかき氷を提供する予定で、現在職員で試行錯誤して商品開発中です。

キーワードは「地産地消」。地域の皆さんと協力しながら、杵築市全体を盛り上げていけるレストランをめざしています。

相馬:「この仕事(福祉)に就いてよかった」「社会福祉法人で働くことを選んでよかった」と思った瞬間とそのエピソードを教えてください。

三重野さん:利用者さんの強みを伸ばし、本人が希望する「働き方」を一緒につくっていく。この「就労支援員」の仕事には、とてもやり甲斐を感じています。

たとえば過去にこんなことがありました。就職をめざし訓練を続けるなかで、次第にマニュアルに沿った動きができるようになったある利用者さん。その後ムクムクと自主性が育ち、自ら提案が出来るまでに成長しました。そんな彼がストレートで希望通りの就職を果たした時は、非常にうれしかったです。

常に利用者さんに寄り添い、その方の想いや希望を理解するよう心掛けています。恋愛相談も含め、よく悩み相談にのっています(笑)。解決後「三重野さんに相談してよかった」とうれしそうに報告に来た時は、支援員としてうれしく、ほっこりとした気持ちになります。

前職では経験できなかった、こうした一人ひとりに心から「寄り添う」こと。それが出来る今の仕事を選んで本当によかったと思っています。

相馬:ひとりひとりが社会福祉HERO’S」の読者には学生さんが多くいらっしゃいます。学生時代の経験でいまに役に立っていること、また、学生時代にしておけばよかったと感じる事などありましたら教えてください。

三重野さん:これまで語った支援員の仕事以外にも、大分県観光協会「ツーリズムおおいた」にて事業企画委員を担当させていただいています。具体的には、大分県の観光動向や指針、観光客誘致への企画会議に定期参加するなどです。大分県の観光を盛り上げる仕事は、学生時代に学んだ知識がとても活かされています。

学生時代にバイクの免許を取得し、15年ほど乗っていました。時間のある学生時代に日本一周ツーリングをしておけばよかった。勉学も大事ですが、そういった「今」しかできない遊びも今後のよい経験になると思います。

相馬:興味深く、盛りだくさんの内容。本当にありがとうございました。

最後にKITSUKI TERRACEの「今のおすすめ」で締めくくっていただけますでしょうか?

三重野さん:夏の時期しか食べられない岩牡蠣がおすすめです!クリーミーでとっても美味しいです。ぜひ、食べに来てくださいね!

 

住吉浜リゾートパーク

KITSUKI TERRACE

 

あとがき

社会福祉法人が運営する話題のカキ小屋店長、ホテルマン、大分県観光協会の企画委員、そして障がいがある方の「はたらく」を支える就労支援員。いくつもの場所で大活躍の三重野さんのお話は、私のなかの「社会福祉法人で働く人」のイメージを大きく変えました。

学生時代より積み重ねた経験を活かし地方の社会福祉法人で働くことは、そこで暮らし働く人を支え、励まし、地域全体を盛り上げていくことである。「社会福祉法人の新しい働き方」を見せていただいた今日、そこにはさらなる可能性があると感じたのでした。

 

相馬
大分県社会福祉法人 博愛会 第二博愛寮

大学では哲学を専攻。当時は、今のように福祉現場で働く自分の姿は想像すらしていませんでした。卒業後行政機関で勤務。とある社会福祉法人のイベントに参加し、知らなかった福祉の可能性とその世界の豊かさに心動かされ転職。福祉の現場へ。
現在、博愛会が運営する知的障害者支援施設で生活支援員として勤務。趣味は、読書と旅。「暮らすように旅をする」をテーマに、旅先をカメラ片手にひとり散歩するのが好き。
「福祉のお仕事」とは、人々の暮らしと共にあるもの。だからこそその活動の幅は広く、クリエイティブで、多くの人やその地域に貢献できる仕事です。少しでもその魅力をお伝えできたら、という思いで執筆させていただいています。

社会福祉法人 博愛会 ホームページ  https://hakuai-oita.com/


大学では哲学を専攻。当時は、今のように福祉現場で働く自分の姿は想像すらしていませんでした。卒業後行政機関で勤務。とある社会福祉法人のイベントに参加し、知らなかった福祉の可能性とその世界の豊かさに心動かされ転職。福祉の現場へ。
現在、博愛会が運営する知的障害者支援施設で生活支援員として勤務。趣味は、読書と旅。「暮らすように旅をする」をテーマに、旅先をカメラ片手にひとり散歩するのが好き。
「福祉のお仕事」とは、人々の暮らしと共にあるもの。だからこそその活動の幅は広く、クリエイティブで、多くの人やその地域に貢献できる仕事です。少しでもその魅力をお伝えできたら、という思いで執筆させていただいています。

社会福祉法人 博愛会 ホームページ  https://hakuai-oita.com/


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