社会福祉HERO’S

福祉のお仕事ぶっちゃけ座談会② 男性保育士 篇

先輩・同僚インタビュー

編集部 2021.02.03

福祉業界のプロの方にお仕事のリアルについて聞く、『福祉のお仕事ぶっちゃけ座談会』

第2弾の今回は、男性保育士篇をお送りします。

今回の座談会のメンバーは、現在、職員を管理する立場の方が多いのですが、バリバリの保育士だったころを思い出して、語っていただきました!

東京都 社会福祉法人 八晃会 宝光保育園 岡村浩充さん (写真左)

大阪府 社会福祉法人 江東会 西区南堀江保育園てのひら 猪又洋祐さん (写真右)

 

兵庫県 社会福祉法人 三田谷治療教育院 明石市立あおぞら園 大向正展さん(写真左)

聞き手:山田英治編集長(写真右)

 

「流れで」始めた男性保育士だったけれど・・・

編集長:はじめに保育士になったきっかけを教えてください。

岡村さん高校時代の女性の友達が、保育士になると聞いて、「じゃ、僕も」いう感じで気軽な気持ちで志すようになりました。そして保育系の短大に行ったら、250人中、男子は11人で「あ、保育の仕事ってそういう仕事だったんだ」と気づきました(笑)

そして、保育園に入ったら男性保育士第一号。それはそれは周りから注目されてしまうわけです。最初は、正直、女性の保育士たちからはどう扱ったらいいか??みたいな感じだったんです。それに自分も、男性保育士と女性保育士との違いはなんだろう、と考えて悩んだ時期もあったんです。

そうしたなかで「そうか、自分は運動することが好きだから、そこを打ち出していこう!」と決めまして、「幼児体育指導者」の資格を取得したんです。すると、なんとなくポジションができはじめました。そうこうするうちに、だんだんと男性とか女性とか関係なく仕事ができるようになっていったんです。

いまは、男女って関係ないと思います。それぞれの先生たちには、自分たちの得意技があって、そのスキルをみんなで持ち寄って、補い合ってチームプレイで保育を実践していくので。

 

当サイト記事「男性保育士オカちゃんは海の塩!?〜存在感ハンパないっス!〜」

猪又さん実は、私も流れで、保育士になりました(笑)。先生に福祉はどうかと勧められたから、といった理由です。そのとき、たまたまドラマで嵐の相葉さんが男性保育士の役をやっていて、ちょっとしたブームになっていたんです。専門学校のクラス80人中50人が男性でした。

実習中はボロボロだったのですが、不思議と辞めたいという気持ちにはなりませんでした。先輩、同僚たちにサポートされて経験を積むことで、なんとかやってこられました。

保育の仕事は、チームプレイが求められます。元々コミュニケーション力が高い方ではない自分も、経験を積むことで、できるようになりました。現在は、副園長という立場で仕事をさせてもらっています。

大向さん私は、もともと、販売の仕事をしていました。販売なので土日もなく大変で、それで次の仕事を探していくなかで、保育の仕事があると友人に聞きました。「そうか!」と思い、それから保育の学校に通い資格を取って保育士になりました。

障がいがある子どもたちが通う保育園を選んだのは、実習のときに初めて障がいがある子どもたちと接したことがきっかけです。「あ、なんて純粋なんだろう」と思ったのです。好きなものは好き、嫌いなものは嫌い。その純粋な姿にやられてしまいました(^^) この子たちと関わる保育がしたいと思ったんです。

障がいがある園児と遊ぶ大向さん

職場では、エンターテイナーの保育士モードに!

編集長:そうなんですね。この仕事の醍醐味はどんなところにありますか。

岡村さん一番は、日々、子どもたちの成長を一番近くで見ることができることですね。よく親御さんから、「うちの子の『初めて』を先生が一番早く見ることができてずるい!」 と言われます。(笑)

大向さんうちの園には、発達障がい、ダウン症、自閉症などさまざまな障がいがある子どもたちがいます。そして、それぞれに接し方が違います。その対応を間違ってしまい「あ、しまった!反省」ということもあるのですが、逆に、「うまくいった!やったぁ!」というときもありますので、それがなによりも嬉しいです。

自閉症の子でどうしても心を開いてくれなかった子と、少しずつコミュニケーションがとれるようになって心が通じ合っているなと思ったときに、本当に嬉しくなります。最高です。

猪又さん現場では、保育士モードになります。子どもたちに対して、エンターテイナーになる必要があるので、ある意味、保育士という役を演じている気分になります。何をしたら子どもたちのためになるのか、笑顔にできるのか、そのためにベストを尽くすという、そんな意識でやっています。ただ、不思議なのですが、我が家にも小さな子どもがいるのですが、家庭での育児ではそううまくはいかないんです(笑)

一同それは、わかる!!!

編集長:家庭での子育てと違うのですね!

猪又さんやはり、現場の責任もあり、モードが完全に違います。公園で別のお父さんたちを見ていて、「あ、おれ負けた」と思うときもありますよ(笑)

編集長:保育の仕事は、女性が多いという印象があります。男女で仕事上の違いはありますか?

猪又さん男性の保育士のメリットは、子どもたちとダイナミックに遊べること。グルグル回したり、男ならではの遊びはウケますね。でも、「先生、もっともっと!」といわれて、体力的に辛いというのも正直ありますが(笑)

岡村さん僕の経験だと35歳まではイケます(笑)

一同確かに!

岡村さん反対に、男性保育士が拒否されてしまうときもあります。お昼寝の寝かしつけなど、普段、男性に慣れていないお子さんの場合だと、男の人が怖いとなるようで、寝てもらえません。そのときには女性の方に代わってもらいます。

保育士はお給料も安く大変というのは本当?

編集長:なるほど。給与と待遇面はいかがですか?保育の仕事は大変で、なり手不足で困っているというニュースも聞きます。そのあたり、いかがでしょうか。まずは勤務時間を教えてください。

岡村さん早番と遅番があるのですが、早番は7:15-16:15まで、遅番は10:00-19:00まで、という感じです。早い日は、16:15に終わります。そして、みなさんもそうかと思いますが、そのなかでの休憩時間は、子どものお昼寝の時間に取ります。昼寝の時間は、「午睡(ごすい)」というのですが、うちだと、13:00-15:00くらいになります。子どもたちを見守る人と休む人が交代して休憩を取ります。

編集長:大向さんのところはいかがですか?

大向さん私のところは、8:30スタートで17:15には終わります。保育は、うちの場合16時までで、その後の時間は、会議をしたり事務処理をしたりする時間になっています。17時過ぎには終わるので、家に帰って家族との時間を大事にしています。

編集長:ちゃんと夕方に仕事が終わるんですね。素晴らしいです。 

猪又さんうちの園では、コドモンという情報共有システムが導入されています。子どもたちの日々の記録や、職員間や親御さんとの連絡ができるアプリなんですが、このシステムを導入することで、効率化を図っています。手書きの事務作業が大幅に減ることで、子どもたちに向き合う時間や、子どもたちのためのお遊びグッズづくりに力を入れることができるようになりました。

それとうちでは「持ち帰り」という家での事務作業などは、原則しないようにしています。

編集長:素晴らしいですねー。では、お給料はいかがでしょうか。

岡村さん:うちの場合、パート勤めの奥さんと私の給料で、2人の子どもを育てています。園が、できるだけ職員の給与に反映させようという方針なので、ありがたいくらいの給料をいただけています。

大向さんうちは子ども3人ですが、子どもたちの習い事をしたり、自分の好きなことをしたりと基本的に不自由のない給料はもらっていると思います。

編集長:世間の印象とだいぶ違いますねぇ(笑) 保育は大変、というイメージをもっていたので。

保育士の仕事ってクリエイティブ!?

編集長:保育士の仕事の面白さってどのあたりにあるのでしょうか?

岡村さん:この前、こんなことがありました。ひとりの子どもが、ハロウィンだということで、仮装のような格好で園にきたんです。そうしたら、ほかの子たちも「自分も仮装したい!」と盛りあがりはじめて、それを見た保育士も「じゃあ、いま、園にある素材(ビニール袋など)を使って、みんなでハロウィンの仮装をやろう! 」となり、園全体でパーティのような感じになりました。

一応、この時期には何をする、という計画がしっかり組まれているのですが、この枠内で、子どもたちの声を聞きながら臨機応変に子どもたちのためになることをやっています。そうした柔軟さが保育士の仕事の面白さでもあります。

大向さんそうですね。我われ保育士に求められるのは柔軟さ、そしてチームワーク、ですよね。子どもたちにどう向き合っていくのか、子どもたちのために何をすべきかをチームとして考え、取り組んでいくんです。

編集長:保育士に向いている人ってどんな人だと思いますか。

岡村さんずばり、傾聴ができることかなぁと。ただ、自分はそれが苦手なんですけど。最近、それができているインターンの学生がいて、やっぱり大事だなぁと感じました。子どもたちの声や様子にじっくり、とことん耳を傾け、観察し、そこから何を読みとれるのか、ですよね。発信と受け止めの仕事なので、気持ちが大事なんです。根幹は人と人との仕事として、コミュニケーションをとりながら、よく聴けるようになりたいと自分も思っています。

編集長:話がうまいだけでなく、「聴く」っていうことが大事なんですね。

岡村さんメリハリかなと。自分が出るところと、聴くところ=受け身になることですよね。空気感や子どもたち、保護者の表情を見ながら、それができるといいなと思います。でも、いきなりは難しいので、経験を積んでもらい、不安がらずにいてもらうことですね。フォローは先輩がやりますので。まずは飛び込んでもらいたいです。目の前の遊びが好きっていうのも大事なことですよ。子どもと遊ぶことが大好きならまずはそれでOK。あとは、周りの先輩保育士がフォローしますので(笑)。

まずは、この世界を見に来てほしい!

編集長:最後に、福祉や保育に関心がある男子学生さんたちや、一般の仕事と保育の仕事とで迷っている方に、一言お願いします

岡村さん自分が何をしたらいいかわからない、でも福祉には興味があるという方は、一度見学などで、私たちが働いているところを見てもらうのが、いいきっかけになると思います。さまざまな情報のなかで、福祉とか保育にはネガティブイメージもありますが、実際は、楽しんで仕事している人がほとんどなので、その姿を見ていただき、施設の一員になっていただけたらいいですね。連絡いただければ、見学はいつでもOKですので。

編集長:新型コロナの影響がありますが、学生の見学があるんですか?

岡村さん見学を徐々に受け入れています。実習の経験は、この仕事をイメージするのに大きく役立つと思うんです。子どもたちと一緒に過ごすことの面白さ、保育による子どもたちの成長などを見ていただくことが第一かな、と思います。

猪股さん福祉にちょっとでも興味があるという時点で、この仕事に向いていると思います。悩むといいますが、興味を感じた時点で向いています。そういう方たちがこれからの福祉を担っていくんだと思うんですね。悩むなら飛び込んだほうがいいですね。

私も15年間この仕事を続けてきて園長代理の役職までこられたのは、続けることで夢に手が届くということを信じていたからです。福祉業界でちゃんとキャリアを積み重ねて管理職になる、そして給料を上げていく、そう思い描いてやってきました。最初はみんな同じ立場です。そこで未来の自分の姿を思い描きながら、自分のスキルや経験を培っていく。最近、20歳の頃からいつかは欲しいと思っていた、とあるメーカーのSUVを買えるところまで手が届いています(笑)。

「給料が安い」といわれることもある業界ですが、ちゃんと夢をもって長く働ければ、夢に手が届きます。悩んでいたら、一歩踏み出してほしいです。繰り返しますが、関心をもった時点で福祉に向いていますから。

大向さん私もまず見にきてもらうのが一番かなと思います。実際に子どもを見て、かかわって、感じてもらって、将来を考える経験にしてもらえたらと思います。私の園でも、事前に連絡もらえば見学はOKで、コロナ禍でも徐々に受け入れています。

子どもたちとかかわると新たな自分に気づけますよ。かかわることで、その子の良さがわかります。ぜひ、迷っている、興味ある方は一歩踏み出してもらえば、お手伝いができるかなと思います。

編集長:みなさん、貴重なお話をありがとうございました。

対談を終えて・・・

就職した保育園で「男性保育士第一号」だったという方も参加してくださった座談会でしたが、みなさんのご活躍のおかげで、いまは保育の仕事に、男女の差が少なくなってきているように感じました。保育士になるきっかけは「流れ」だったけれど、実際仕事をはじめたら、子どもたちとのコミュニケーションが楽しくてやりがいを感じ、長く続けているというお話が印象的でした。そして、保育士同士のチームプレイで、どんな課題も乗り越えていける!そんな力強さを感じました。見学はウェルカムということなので、ぜひ、保育士のお仕事に関心があったり、迷っていたりする方は施設に見にいってみてくださいね。

男性保育士のみなさん、貴重なお話をありがとうございました。

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