社会福祉HERO’S

社会福祉の事務室は、小学校の時の保健室みたい!?障がい者支援の事務スタッフ日記③
エミリー VS 元ファッションリーダー!?

社会福祉な「まいにち」

奈良県 執筆者 エミリー 2020.03.19

精神障がいがあり救護施設で暮らしている70代の女性Mさん。毎日、割りばしの袋入れ作業をしています。そんなMさんの密かな日課は、私のファッションチェック。彼女の実行力と遠慮のないコメントが、私にはとても刺激的でワクワクします。

今日は、そんなMさんとのエピソードをご紹介します。

○月○日

「えぇやん!えぇやん!ちょっとぉ~!おはようさん!」

挨拶してくれる大きな声の主はMさん。

通用門を入ったあと、一つめのドアからずっと一緒。二つめのドアを一緒に開けて、上履きに履き替えるのを待ってくれて、三つめのドアを一緒に開けた。この間ずっと大きな声で「えぇやん!」を繰り返すMさん。

私が事務室に入りタイムカードを打刻する間も待ち、私が廊下に出たとたんに、

「ちょっと!ちょっと、アンタ!えぇやんかー!!えぇわぁ〜!ホホホ~!」

この日、私は彼女から初めての最高評価をいただいた。

「ホンマえぇわぁ~!」

私のスカートを指差して、いつものように「ホホホ、ホホホ。」と上品な笑み。どうやら赤のフレアスカートが良かったみたい。

ほぼ毎日、私の化粧もチェックしている彼女は、

「その色えぇねぇ。ホホホ。」

と、照れてしまうほどの至近距離で私のアイシャドウの色をほめてくれる。

以前、Mさんから

「ウチはやねぇ~、化粧に小一時間ほどかけてたわ。おたくは何時間?」

とたずねられて、事務職仲間と一緒に大笑いしたことがありました。

次回のメイク話には、特殊メイク疑惑を解かなくちゃ。

10分間の休憩時間だけど、作業の手を止めないMさん。私の化粧の出来は、「今日もうまいことできてる」とのこと。

もしかすると、私をライバル視しているかもしれないMさん。ワクワクしながら彼女のことを担当支援員に聞いてみました。

「Mさんはまじめな方で、ご自身で決めた日課の〝ベランダの掃きそうじ“と、”部屋の掃除“を丁寧にされます。他の方に気を配られる優しい方で、とくに同室の方に何かあると職員にすぐに知らせてくれます。」

担当支援員は、続けて話してくれました。

「私がMさんのために心掛けているのは、簡潔な言葉でゆっくり話すこと。会話の内容を覚えられないときもあるので、メモを書いてお渡しすることもあります。

それと時折、Mさんは精神障がいの特徴である幻聴や妄想状態になり、支援できないことを言われる場合もあります。そんな時はあいまいな返答はせず、出来ないことは『できない』とお伝えするようにしています。

できないことを伝えると、しばらくは怒っているようですが、時間がたつにつれ落ち着かれます。場合によっては、時間を置いてからお伝えするんですヨ。」

全く想像していなかったMさんの姿。少しの間、私は受け入れられませんでした。

障がいの症状のある暮らしのなかで、相手を思い、優しくできるMさん。彼女は私に何を求めているのかな。

Mさんが、私とのやり取りを楽しんでくれているとしたら、うれしいな。

だって私、Mさんとの会話が単純に楽しいんだもの。

Mさんの手。英字が刻印された太めのゴールドリング。彼女らしくて、とても似合うと思います。

 

エミリー
奈良県社会福祉法人青垣園

人材養成・管理栄養士・産業カウンセラー。社会福祉との出会いはデンマークでの授業。病院勤務を経て留学、一旦家庭に入り子育中に心理学を学ぶ。医療業界に復帰したが、縁あって2012年より現在の職場に管理栄養士として勤務し、2014年現職に異動となる。これまでの経験から、障がいがあるために身体や言葉などで表現できなくても、一人ひとりの心は動き思いがあると信じています。記事の中では、施設ご利用者が成長していく様子や人間性が磨かれ成長していく職員の様子を書きたいと思います。私が勤務している社会福祉法人はこちらです。https://www.aogakien.jp/

人材養成・管理栄養士・産業カウンセラー。社会福祉との出会いはデンマークでの授業。病院勤務を経て留学、一旦家庭に入り子育中に心理学を学ぶ。医療業界に復帰したが、縁あって2012年より現在の職場に管理栄養士として勤務し、2014年現職に異動となる。これまでの経験から、障がいがあるために身体や言葉などで表現できなくても、一人ひとりの心は動き思いがあると信じています。記事の中では、施設ご利用者が成長していく様子や人間性が磨かれ成長していく職員の様子を書きたいと思います。私が勤務している社会福祉法人はこちらです。https://www.aogakien.jp/

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