インタビューは脱線してこそ面白い?
~私が福祉の仕事を選んだ理由~
先輩・同僚インタビュー
鹿児島県 執筆者 KW 2019.10.04
皆さん、こんにちは。社会福祉法人照島(てるしま)会のKWです。
前回、他業界から転職してきた職員のインタビュー記事を投稿させていただいたところ(2019年3月26日 http://www.shafuku-heros.com/blog/detail22/)、それを読んだ別の職員から「私もインタビューを受けたい!」とリクエストを受けました。幼い頃から「福祉の世界」になじみ、学生時代には福祉施設で多くのボランティア経験を積み、卒業後も「福祉の仕事」を選ばれたMYさんです。
ミレニアル世代の方がたは、「人の役にたつ仕事」への関心が他の世代よりも高いと耳にしたことがあります。その理由や背景を探り出せたら、と思い、その世代の一員であるMYさんにお話をうかがいました。
―MYさんは介護福祉科の学校を卒業されてそのまま福祉ひとすじにお仕事を続けておられるわけですが、どのようなきっかけからですか?
MYさん:小学校低学年の頃、父方の祖母が地元の介護老人保健施設(*注1)に入ったのがそもそもの始まりです。私はおばあちゃんっ子でしたから、学校帰りには毎日のように祖母のところに会いに行っていました。家と学校と施設、この3つが私の日常生活の場でした。
中学・高校と進学してからも、学校でボランティアの企画や募集があれば当然のように参加していました。介護施設でのボランティアが多く、そのなかには祖母が入っていた施設もあります。
―高校も福祉科を選ばれたとのことですが、やはり将来を見すえてのことでしょうか。
MYさん:はい。普通科の授業よりも専門的な勉強の方に興味があったからというのもありますが。
―なるほど。しかし専門的な勉強といっても、いろんな分野があります。そのなかからMYさんは福祉を選ばれました。何がMYさんを「福祉の世界に進みたい!」と思わせたのでしょうか。
MYさん:前述したとおり、福祉や介護は当たり前のものとして子どもの頃から自分のなかに存在していました。だから「きっかけは?」と聞かれると逆に戸惑う(笑)。福祉科に進学にするにあたっても、何の迷いもためらいもありませんでした。今振り返れば、そんな自分が不思議に思える時もありますけど、当時の私にとってはごく自然な流れでした。
―そして卒業された後、おばあさまがいらした施設でキャリアをスタートしたのですね。
MYさん:介護士として入職しましたが、学生の頃は漠然としか理解していなかったことでも、仕事を経験していくことで理屈や根拠から考えられるようになり、改めて新しいことを学んだり技術を身に着けたりしていくことがとても面白く感じるようになりました。
・・・と、ここまではMYさんの生い立ちや福祉との馴れ初めなどを伺っていたのですが、ちょっとした私(KW)の気まぐれ?から話は徐々に脱線し・・・・
―実はMYさんについて、個人的にとても気になっていることがあるんです。いつだったか、MYさんを一目見て「雰囲気が変わった!」と強く感じた時があって・・・。自信というか、貫禄というか、とにかく背負うオーラがそれまでと一変していて、しばらく目が離せなかったんですよね。あれはいつだったのだろう・・・・。確か昨年度から同じ「身体拘束廃止委員会」(*注2)の委員ですよね。委員会の席上だったかな・・・・?
MYさん:昨年度から「身体拘束廃止委員会」の委員を務めています。委員になってから、「ミトン(*注3)を外している時間を少しでも長くしてさしあげたい」という気持ちが徐々に強まりました。どうすればそれが叶うのか、どのような説明の仕方だったら他の職員にも重要性を理解してもらえるのかなど、常に考えながら仕事をするようになりました。
それから、前の職場では10年間勤務していたにも関わらず、思ったこと、考えたこと、疑問に思ったことなどを口にすることはほとんどありませんでした。多分、周囲と波風を立てるのを無意識のうちに避けていたのだと思います。でもこの職場(特別養護老人ホーム潮風園)に転職したとき、これからは自分の意見や疑問は遠慮せずに言おうと決めました。それを意識し続けてきたことも関係があるかもしれません。
潮風園にはたくさんの定例会議や委員会があります。みんな時間を割いて会議室に集まります。ですので、会議の時間は有効に使いたいと考えています。黙っているのはもったいないです。「言わなくても分かるだろう」というよりもむしろ、「言わないと何も分からない」なのではないでしょうか。
周りが先輩ばかりだと確かに躊躇するときもありますが、誤解を恐れずに言えば、「遠慮する」と「(先輩を)たてる」とは違うと思っているし、自分の考えを表に出して初めて相手の考えていることが分かることもあります。
今、私は自分の考えや思ったことを発言したり、他の職員の意見を聞いて話し合ったりできているので、とても楽しいし充実しています。
<インタビュー後記>
思わぬきっかけから当初予定していたテーマから逸れていったインタビューでしたが、結果的にはこの「脱線」は成功だったと思っています。なぜなら、身振り手振りを加えながら熱く語ってくださったMYさんの内に秘めた思いをうかがい知ることができましたから。ついMYさんの話に聞き入ってしまい、インタビューの時間を大幅にオーバーしてしまいました。(実はこの後も当園に転職したきっかけや趣味の写真撮影など、まだまだ話は続きました)
時勢や価値観の変化・多様化など、状況に応じた柔軟な変革や対応が今の福祉の現場には求められています。
「いろいろと変わっていく過程に自分も加っていたい」。そう話すMYさんの強いまなざしに頼もしさを感じました。
(*注1) 介護保険を利用して施設に入居し、介護サービスを受けることができる施設を「介護保険施設」といいます。「介護保険施設」には、①介護を受けながらリハビリをして在宅復帰を目指す「介護老人保健施設」、②介護を受けながら長く生活する「特別養護老人ホーム」、③長期入院して療養する「介護療養型医療施設(介護医療院)」の3種類があります。MYさんのおばあさまが入られたのは①の「介護老人保健施設」です。ちなみに当園は②の「特別養護老人ホーム」です。
(*注2) 身体拘束は、利用者(入居者)の生活の自由を制限するものであり、尊厳ある生活を阻むものです。当園では、行動を制限する目的で実施するすべての行為を「拘束」と位置づけています。入居者の尊厳と主体性を尊重し、拘束を安易に正当化することなく、身体拘束をしないケアの実施に努めています。そのために「身体拘束廃止委員会」を設置し、毎月1回、各ユニットや部署の代表が集まって身体拘束の廃止・改善に向けての検討・議論を行っています。
(*注3) かきむしりの防止などを目的とする手の平ごと5本の指を覆う手袋のこと。指を思うように動かすことが困難となります。
KW
鹿児島県社会福祉法人照島会 副施設長
大学卒業後、民間企業(金融)での勤務を経て2016年に入職しました。全く異なる業界からの転職に
当初は戸惑うばかりでした。しかし今では、社会福祉の仕事がもつ多種多様な可能性にワクワクしたり、それぞれの専門性を活かしながら働く方たちの姿に圧倒されたりと、新たな発見や驚きの日々を過ごしています。
この思いを皆さんにお伝えしたくてライターに応募しました。
趣味は下手の横好きで続けているフラメンコと、読み始めるとすぐに寝落ちしてしまう読書。
社会福祉法人照島(てるしま)会 http://chofuen.terushima.com/
大学卒業後、民間企業(金融)での勤務を経て2016年に入職しました。全く異なる業界からの転職に
当初は戸惑うばかりでした。しかし今では、社会福祉の仕事がもつ多種多様な可能性にワクワクしたり、それぞれの専門性を活かしながら働く方たちの姿に圧倒されたりと、新たな発見や驚きの日々を過ごしています。
この思いを皆さんにお伝えしたくてライターに応募しました。
趣味は下手の横好きで続けているフラメンコと、読み始めるとすぐに寝落ちしてしまう読書。
社会福祉法人照島(てるしま)会 http://chofuen.terushima.com/