社会福祉HERO’S

社会福祉の事務室は、小学校の時の保健室みたい!?障がい者支援の事務スタッフ日記②

社会福祉な「まいにち」

奈良県 執筆者 エミリー 2019.07.05

「あの人、今いるかな? あっ!いるいるぅ~♪」入室前の思いは、きっとみんな同じですよね。

障がい者支援の事務スタッフ日記、エミリーです。事務室には毎日、何人ものご利用者が話をしに来られます。訪れ方は人それぞれ。

○職員が出入りするドアのガラス窓からひょっこり顔をのぞかせて、目を合わせて笑顔で立ち去る方

○廊下から大きな声で事務職員を指名する方

○ドアからしばらくジーっと見つめて、立ち去る方

そのたびに、私たち事務職員は驚いたり、笑ったり、時には一緒になって深く考えたりしています。

さて、私が“事務室には、いろんな方が来られるなぁ”と、感じるようになったのは、Nさんに励ましてもらったときからです。だから今回は、Nさんを紹介させていただきます。

Nさんは、50代半ばくらいの男性。知的障がいと言語障がいがあって、聞こえているようだけど言葉が無く、表情もほとんど変わらない方です。でも、Nさんは私を見つけると、いつもこちらに向きを変えて、必ず視線を合わせてくれていました。

○月○日

会議の資料づくりが上手くできないために、私は少し途方に暮れた状態で数冊の書類を抱え、管理職員のデスクをめざして歩いていました。

考えがまとまらないまま、知的障がいのある人が生活する棟へ到着。フラフラと歩いていたとき、Nさんと出会いました。

ため息まじりでうつむき加減な私の姿から何かを感じたNさん。私と視線を合わせてくれたかと思うと食堂の方へ視線を送って、もう一度視線を合わせてくれて・・・次に、カップで何かを飲む身振りを2、3回して・・・そのあと両腕を数回大きく広げて見せてくれました。

「お茶を飲んで一緒にすごそう。きっと元気になるヨ。」と、まるで話しているように私に伝えてくれました。

障がいのある人から励ましてもらえるなんて、この時まで思ってもみなかったこと。だから、嬉しさと驚きでいっぱいでした。

あまりに嬉しすぎて、つい聴き直してしまいました。

「私を励ましてくれているの!?」

するとNさんは、大きく、ゆっくり、2回うなずいてくれました。

「うれしいっ」

こうして私たちの距離はグッと近づきました!

あとで独りになったとき、胸の奥の方で響きました。“支えあって暮らしている”

こんな風に向かい合って一緒にお茶を飲んだら、気分もほぐれそう

お茶の時間を終えて、ひとり周囲の皆さんのようすを見守る。目配り&心配り中のNさん

Nさんは普段どんな方なのか知りたくて、Nさん担当の支援員に聴いてみました。

「Nさんは、他の方が食事を終えるのを待って、部屋のある2階まで一緒に戻って行きます。連れて行ってあげている感じ。ほかには、支援員のように他のご利用者の手助けをすることも。創作活動の準備では、道具など重たい物でも頑張って運ぼうとしたりして、面倒見のよい方ですヨ。」

(あの時、Nさんは私を心配してくれていたんだ・・・というか、私、普段から気にかけてもらってる!?)

Nさんの好きなこと「創作活動」はいつも一番乗り!

Nさんの担当者は、続けて教えてくれました。

「それと。Nさんは、暮らしのなかでいろいろなことをしっかりと感じていて。支援員にその気持ちを伝えようとして“うなずき”や“身振り手振り”で表現してくれますヨ。」

やっぱりあのときNさんは、小さく固まっていた私を心配してくれてた!

誰よりも先にいつもと様子が違う私に気付いて、気分転換に誘ってくれたNさんの優しさが嬉しくて、もう一度しあわせな気分になりました。

 

おまけ。第一回目の連載でご紹介したTさんの近況です。

↓↓↓連載①はコチラで↓↓↓

社会福祉の事務室は、小学校の時の保健室みたい!? 障がい者支援の事務スタッフ日記①

Tさんがなんと障がい者の体育大会に初めて出場し、卓球部門で見事に銅メダルを獲得!!

春先からずっと花粉症がひどいのに超大活躍です!!

快挙!! 胸に輝く銅メダル!!

事務職員はみんな、個性的な施設ご利用者にいろいろ話しかけてもらう毎日。だから、事務室は一日一回大爆笑!!

障がい者支援の事務スタッフ日記、次回もお楽しみに。

 

 

エミリー
奈良県社会福祉法人青垣園

人材養成・管理栄養士・産業カウンセラー。社会福祉との出会いはデンマークでの授業。病院勤務を経て留学、一旦家庭に入り子育中に心理学を学ぶ。医療業界に復帰したが、縁あって2012年より現在の職場に管理栄養士として勤務し、2014年現職に異動となる。これまでの経験から、障がいがあるために身体や言葉などで表現できなくても、一人ひとりの心は動き思いがあると信じています。記事の中では、施設ご利用者が成長していく様子や人間性が磨かれ成長していく職員の様子を書きたいと思います。私が勤務している社会福祉法人はこちらです。https://www.aogakien.jp/

人材養成・管理栄養士・産業カウンセラー。社会福祉との出会いはデンマークでの授業。病院勤務を経て留学、一旦家庭に入り子育中に心理学を学ぶ。医療業界に復帰したが、縁あって2012年より現在の職場に管理栄養士として勤務し、2014年現職に異動となる。これまでの経験から、障がいがあるために身体や言葉などで表現できなくても、一人ひとりの心は動き思いがあると信じています。記事の中では、施設ご利用者が成長していく様子や人間性が磨かれ成長していく職員の様子を書きたいと思います。私が勤務している社会福祉法人はこちらです。https://www.aogakien.jp/

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