社会福祉HERO’S

障がい者福祉の相談員のプロとして、心がけてる4つのこと

先輩・同僚インタビュー

福島県 聞き手 motty 2019.05.10

motty社会福祉ライターのmottyです。福島県いわき市にて、社会福祉の仕事に入り15年。福島県は震災以降どうしても「負」のイメージをもたれている方も多いと思います。でも、県内に住む人も、働く人も、みなさんバイタリティにあふれ生活しています。そんな元気な人たちのなかから元気を伝えたい!私自身はまだまだ若輩者ですが、若者とベテランの中間として、自分が発信できること、日々の仕事や毎日のなかから得たもの・学ぶべき人・伝えたい思いをお伝えしていこうと思います。

私の勤めるいわき福音協会は、初代の理事長、大河内一郎医博が、障がいがある子の人生を支えたいとの思いからつくった「福島整肢療護園」をはじめ、入所や通所の事業所、ホームヘルプ、保育園、相談事業と幅広い事業を手掛けております。

いわき福音協会のあるいわき市平窪地内。いわき市は海もあり、山の自然も豊かな地区です。

多様な方を支援の対象としていますが、支援の理念は「いと小さき一人のために」。どんな人でもその人一人ひとりの人生を見つめ、支えることを基本としています。

その理念を実践し利用者さんに寄り添いながらも、自分の意見をさりげなくおりまぜ、利用者さんの気持ちを引き出すことのできるナイスな先輩をご紹介していきたいと思います。

mottyまずは自己紹介をお願いします。

栗村氏

栗:栗村(くりむら)嘉起と申します。「よしき」と呼ばれることが多いですが「よしゆき」です。名前をなかなか覚えてもらえずちょっと悲しいときがあります。話のネタにはなりますけどね(笑)

1972年生まれの46歳、結婚17年目で子どもは男3人の男子系家族です。サッカーと酒をこよなく愛する中年オヤジです。とくにキリンラガービールとイモ焼酎が大好物で、子どもの顔を見ながら晩酌するのが最近一番の楽しみになっております。

仕事の話をさせていただくと、いわき障害者就業・生活支援センターにて相談スタッフとして勤めております。こちらでは4年目となります。それ以前は19年間、入所の事業所で勤務しており当法人では23年目になりました。

mottyいろいろ答えてくれてありがとうございます(笑)。就業・生活支援センターの仕事の内容を簡単に教えてください。

栗:障がい者の「働きたい、働き続ける」を応援する事業所となります。「働く」ことに関するものと、「働く」ことを支える「生活」の相談、コーディネート業務がメイン業務となります。

一般企業に就労したいという希望に応じて相談を受け、面談を重ねながら職場実習などを提案し、就労の準備支援などを実施していきます。職業紹介はハローワークの仕事となりますが、相談者本人の希望によっては、本人と企業の間に潤滑油的に立ち入ることで調整役となり、就労後の「働き続ける」ことを目標とした定着支援も行い、長く働けるよう応援していきます。相談は無料で一切費用はかかりません。障がいの手帳をお持ちでない方の相談も受け付けております。Mottyさんも悩んでませんか?

mottyぜひ次の機会におねがいします(笑)。さて、ソーシャルワークにおいて一番の要となる「相談業務」ですが、その「相談業務」において栗村さんが大事にしていることを教えてください。

栗:企画力、提案力、調整力、交渉力。この4つを自分は鍛えているところです。

障がい者支援のカテゴリーでの相談だと、助言を与えられる存在のように思われるかもしれません。でもそんなことはなく、あくまで対等な関係で話をするのが相談員ですし、できるように努めていく必要性があります。相談内容については就労における悩みはもちろん生活上の悩みも多くいただきます。例えば、恋愛相談や一人暮らしをしたいなど。障がいの特性が起因している部分もありますが障がいのあるなしに関わらずごく一般的な相談として受け止めることも必要だと思っています。

ご本人の気持ちを受け止めるために、先入観をもたず素直な気持ちで聞くようにしています。ただし、聞きながらご本人の背景を考えるようにしています。相談に至るまでに、ご本人が育ってきた環境や、取り巻く環境があるはずで、いま悩んでいる事柄だけが相談にきた理由じゃないことが多いですね。

motty当然ですが傾聴する力を鍛えるのは必須ですね。

栗:私もこの職場にきて、相談という仕事をしてからさらに考えるようになったと思う。人の悩みを解決するって言うのは簡単じゃない。あたり前ですが、10人来れば10人の悩みがあって、10人それぞれ解決方法が違うわけです。ただ、一緒なことが一つだけ。決めるのは、ご本人だということ。相談に乗った私もそりゃいっぱい考えるけど、ご本人に決めてもらうために考えてもらう。障がいがあろうがなかろうが、そこは一緒だね。

mottyなるほど。何をもってそういう悩みに対応できるようになってきましたか。

栗:やっぱり自分のなかの引き出しを増やすことですね。一つのことを極めるのはもちろん素晴らしいことですが、私はいろいろな悩みに向き合えるように、自分のもっている引き出しを増やそうと常に心がけています。いろいろなことに興味をもってみるようになって、いろいろな人と接するようになって、相談にきたご本人はもとより、働く先の企業の担当さん、学校の先生、行政の担当の方、いろいろな方とかかわることで引き出しが増えました。サッカーと酒だけでは足りないからね(笑)。これは案外、人材育成のキモなんじゃないかな。福祉に限った話じゃないと思うけど、いろいろな引き出しをもつことでいろいろな人と仕事をすることができる。聞いたり読んだりした情報じゃなくて、人とかかわるなかで体験したことがしっかりとした身になっていく。その体験はその人の財産だよね。だから、職場のみんなにはどんどん人とかかわるように話しています。

mottyいまの職場だけじゃなくて、これから仕事をめざす人たちにもぜひ伝えていきましょう。栗村さん自身はどうやって引き出しを増やすようにしていますか。

栗:まずはたくさんの人と触れ合うことですね。研修の場ももちろんそうだし、仕事の付き合いは格好の学びの場です。私は趣味も多いと思うし、いろいろな活動も好きです。消防団では班長を勤めていますがもう20年になりますね。子供会の会長もしています。そこで通じた人付き合いを楽しんでるから、大変だと思ったことはないです。人付き合いから得たものが仕事に活かせているものも多いよね。そのかわりスケジュールは首相なみだけど(笑)

あとは、イライラしても得るものはないので、イライラしそうになったら考え方を切り替えるように心がけています。すぐ開き直っちゃうし。

筆者(左)と栗村氏(右)

mottyすぐ悩む私はそんな踏ん切りがほしいですよ(笑)そんな風に仕事を通じて得ることができたものがあれば教えてください。

栗:とても人に興味をもつようになりました。これはよいことか悪いことかわからないけど、街を歩いているだけでもすれ違った人がどんな人なのか、何をしている人なのか想像したりしちゃいます。客観的に見るとやばいかな(笑)。でもあそこの人の家庭はとか、この人がいまここになぜいるのかとかほんっとに余計なお世話な話ばかり考えてたりする。あれこんな話載せられる?(笑)

でもそんな風に興味をもって接すると、この人にどんな背景があるのか、いま何がしたいのか、見えてくることもある。いろいろな人と出会うことはほんと楽しいし、いろいろなところに活きてきますね。

子育ての話になりますが、子どもは男3兄弟でとってもにぎやか。ドタバタな時も多いですが、やっぱりできるだけよいところを取り上げて褒めるようにしています。子どもが「~ちゃんのこういうところがいやなんだ」って話するでしょ?「嫌なところだけじゃないはず、よいところを探してみようよ、自分もそう見られたらいやじゃない?」と話すようにしています。やっぱり子どもたちにも人の好きな所を探してほしいし、子どもの引き出しも増やしてあげないと。学校の引き出しはどうなってるか分からないけど(笑)

わが子との探検:栗村氏

mottyうちの子もですよ(笑)。でも本当、子育ても余裕をもって向き合えますね。では、最後に今日のインタビューを振り返って一言お願いします。

栗:悩みを解決すると話しましたが、その悩みが解決するとしてもその相談が終わりということはありません。終わりを決めるのは相談したご本人ですし、私たちは決めてはいけない。正しい答えなんてものはないし、常に変化していくものです。そんな仕事にかかわっていることを自分は素晴らしいと思っていますし、福祉に取り組んでいるみなさんや、めざしている人にも味わってほしいと思います。本当に、飽きない仕事ですよ。

以上、写真はまじめに映ることに努めた栗村氏でした。

mottyありがとうございました。栗村さんからは仕事初めからたくさんのことを教わってきました。今回は人との向き合い方を教えていただきましたが、技術的なことから事務的なこと、仕事外での息抜きなどもよく聞かせてもらいました。今日はまじめな話が多かったような気もしますが、仕事の話でもすぐ笑いにつなげてきます。見習うべき先輩がいるのは刺激になりますね。次回も、素敵な人や楽しいこと、どんどん紹介していきたいと思います。

いわき障害者 就業・生活支援センター職員と(右上段4人目:栗村氏)

motty
福島県社会福祉法人 いわき福音協会(ふくいんきょうかい)

 福祉系の学校を卒業し、福祉一筋15年。職場ではサービス管理責任者として、家に帰れば小学生二人のパパとして、部下で先輩で夫で父親を奮闘中。年数と態度だけはそろそろベテランと言ってもいいかな、と思う今日この頃ですが、いろいろな人に出会うたびに「凄いHEROがいっぱいいるなぁ」と振り返りの毎日。公私とも、自分もそんなHEROになるべく修行の日々です!

 福祉系の学校を卒業し、福祉一筋15年。職場ではサービス管理責任者として、家に帰れば小学生二人のパパとして、部下で先輩で夫で父親を奮闘中。年数と態度だけはそろそろベテランと言ってもいいかな、と思う今日この頃ですが、いろいろな人に出会うたびに「凄いHEROがいっぱいいるなぁ」と振り返りの毎日。公私とも、自分もそんなHEROになるべく修行の日々です!

この記事をシェアする

一覧に戻る