社会福祉HERO’S

『人生100年時代!私はまだまだヘコタレません!』76歳のスーパー介護福祉士インタビュー

先輩・同僚インタビュー

宮崎県 聞き手 くろたか 2019.03.08

カウンターキッチン越しのご利用者との会話は、明るく楽しそうに弾んでいます。「トントントン」リズムのよい包丁の音を合図に、ご利用者の方がたは、テーブル拭きやランチョンマットを用意し食事準備の手伝いをしてくれています。

料理を担当しているのは、介護福祉士の海野トヨ子さん(76歳)です。食事づくりをしながら、ご利用者のことを常に気にかけ声かけをしています。

料理をしながら利用者との会話で笑顔になる海野トヨ子さん(左)

そんな彼女が勤務しているのは、社会福祉法人立縫会(宮崎県日向市)が運営する認知症対応型共同生活介護(以下:グループホーム)です。グループホームとは、認知症と診断された高齢者が共同生活できる場(居住)です。家族のようにスタッフが食事をつくり提供します。さらに、入浴、排泄の介護、生活支援、機能訓練などを自由に受けることができる施設です。

今回は、76歳の介護福祉士海野さんにフォーカスを当て、仕事に向き合う思いをインタビューしました。

くろたか:グループホームには、いつから勤務されていますか?

海野さん:2012年グループホーム静妙庵(せいみょうあん)の開設から勤務していますので、7年目になります。1998年に一度定年退職しましたが、グループホーム静妙庵のオープンの際に、現理事長から声をかけていただき勤務させていただくことになりました。「大好きな介護現場」「大好きなご利用者」とかかわることができることは、とても喜びを感じています。

くろたか:いまは、どんな仕事をされていますか?

海野さん:現在は、パートとして勤務しています。週3日〜4日、半日勤務し、ご利用者の食事づくりやトイレ誘導、オムツ交換などをしています。主に食事づくりがメインです。自宅に居る時、通勤途中に「今日は、ご利用者にこれを食べてもらいたいなあ」「自分が利用者だったら、こんな食べ物を提供してもらいたいなあ」などイメージしながら出勤することがものすごく楽しいです。そしてなにより、カウンターキッチン越しから、ご利用者が完食する姿を見ることは、とても嬉しいです。

食事をつくる海野さん

くろたか:介護の仕事で、心掛けていることはなんですか?

海野さん:私は、戦争を経験しています。多少のことでは、ヘコタレません。私の両親は戦争を経験し、厳しく育てられました。両親の苦労なども肌で感じています。私が介護福祉士の試験を受ける際は、子育てをしながら明け方の3時や4時に起きて勉強をしていました。ドンと来い!って感じです。これ以外にもさまざまなことを経験してきたので、ご利用者も一緒ではないかと思っています。ご利用者と世代が近い私ならではのサービスを提供することを常に心がけています。

介護の仕事は、ご利用者の状態によって、臨機応変に対応しなければなりません。それぞれにあった支援ができるように、日々ご利用者を観察する視点が重要です。何気ない会話や表情、しぐさを見逃さないようにしています。ご利用者との信頼関係づくりは、まずは相手の話を聞き、理解しなければなりません。スタッフの心もとない支援は、ご利用者にすぐに察知されると思います。気持ちに寄り添う陰日向のない支援が求められています。

そして「人とのつながりと尊厳」ですね。実は、最初、今回のインタビューを断ろうと頭を過ぎりました。ですが、「せっかくのご縁」「社会福祉法人のために」と思い、引き受けさせていただきました。前日の夜は、緊張をして眠れませんでした。

海野さんを慕う若手スタッフも多いです。そんななかで一緒にチーム(ユニット)を組むことの多いグループホーム勤務5年目の末永和也さんに海野さんの印象を聞いてみました。

グループホーム勤務5年目の末永さん

末永さん:海野さんは、ご利用者のことを常に考えていると思います。ご利用者のペースに合わせ、「相手の立場になって」介護を提供している姿勢は、学ぶものがとても多いです。ご自身の健康管理も徹底されていますので、体調を崩した姿は見たことありません。スーパー介護福祉士ですね。私たち職員からの相談もしやすいですし、わからないことは、一緒になって考えてくれます。勤務が一緒になると安心します。

くろたか:いつも笑顔の海野さんの元気の源を教えて下さい。

海野さん:まずは「自分が心身共に健康である」ことです。休日は、趣味の文化箏(ぶんかごと)やちぎり絵でリフレッシュしています。そして、孫の成長が楽しみであり元気の源です。仕事中は、ご利用者との会話が楽しくて、楽しくて仕方ありません。ご利用者が笑顔になる会話をすることは、私のパワーとなります。

この仕事の大前提は、高齢者が好きかどうかだと思います。ご利用者には、100歳、99歳の方もいますので、私にとって、娘と母、親子の年齢になりますね。いまでもいろいろと教わることが多いです。

屋外にて食事を楽しむ利用者と職員たち

インタビューを終えて

インタビュー後、すぐに夕食づくりに取り掛かりました。海野さんの料理は、ご利用者のみならず職員からも大人気です。

法人にとって高齢者を雇用することで、高齢者職員ならではの気づき、細やかなサービス、そして若い職員へのアドバイスなどが提供できると考えています。自分の体力や心情をご利用者の「我がごと」のように重ね合わせています。介護を「より身近なこと」と感じることができるからこそのサービス精神かもしれません。いままでの経験からの食事づくり、コミュニケーションの間のとり方は、職員全体のスキルアップに繋がっています。

コスモス観賞にて、利用者と職員たち。海野さん(右から3番目)

海野さんは「体力が続く限り携わっていきたい」といきいきと語ります。「人生100年時代」に、生涯何を活かし、どのように自己実現をめざし社会と関係を築いていくのかと不安をもっている方も少なくないと思います。プライベートの時間も大切にしつつ、自分の働く姿勢を貫くことは、有意義な時間の過ごし方として、人生後半戦のお手本になるのではと考えています。

 

くろたか
宮崎県社会福祉法人立縫会

修士(社会福祉学)
太平洋日向灘が一望でき、風光明媚な景色が広がる日本のひなた宮崎。神武天皇がお船出をした神話のある日向市美々津町から投稿しています。

とても元気であった祖父母に介護が必要となったことで「高齢者にとって、心豊かな生活とはなにか」をより一層身近に考えるようになり、2017年に転職しました。
高齢者がどんな状況になっても、一人ひとりの尊厳が守られ、笑顔ある生活が送れる支援を追求していきたいと思っています。

日向市はサーフィン世界大会が開催される程のポイントがあり、自然を満喫することができます。

修士(社会福祉学)
太平洋日向灘が一望でき、風光明媚な景色が広がる日本のひなた宮崎。神武天皇がお船出をした神話のある日向市美々津町から投稿しています。

とても元気であった祖父母に介護が必要となったことで「高齢者にとって、心豊かな生活とはなにか」をより一層身近に考えるようになり、2017年に転職しました。
高齢者がどんな状況になっても、一人ひとりの尊厳が守られ、笑顔ある生活が送れる支援を追求していきたいと思っています。

日向市はサーフィン世界大会が開催される程のポイントがあり、自然を満喫することができます。

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