社会福祉HERO’S

Youは何しに介護の世界へ? ~東南アジアからやってきたEPA候補生インタビュー~

先輩・同僚インタビュー

岡山県 執筆者 やまちゃん 2019.02.15

はじめまして!わたくし、やまちゃんと申す者です。

現在私は、岡山県にある社会福祉法人の施設で、事務員6年目に突入しています。しかし、その前までは、社会福祉の「し」の字も掛かってない、古本屋だったり、小さな携帯ゲーム会社でアシスタントデザイナーをしていました。

もともと本やゲームが好きだったため、古本屋でアルバイトをしていたところ、友人のお誘いでゲーム会社へ入社。全くのド素人ではありましたが、諸先輩方からご指導いただき、しばし勤めることに。ただ、なかなか慣れない業務に体調を崩し退職。その後、今度は家族のツテによりいまの法人へと入職する運びとなりました。こちらも全く経験のない職種でありましたが、なんとかかんとか年数を重ねているところです。

実は古本屋も友人の紹介で勤めており、職に関しては有難いご縁で繋がっています。縁が繋ぐ現職は、地域との縁を大切にする職種。これもまた、めぐり合わせなのかもしれません。なんて思う今日この頃。

さて、そんな私が今回ご紹介するのはこちら!

―Youは何しに介護の世界へ?~EPA候補生インタビュー~―

 

まずこう聞いて、なるほどEPAか、となる方は多くないと思います。では、EPA候補生とはなんぞや、ということですが、いま話題になっている「外国人労働者」に関わる事業、と考えていただければ結構です。正しくは「EPA(経済連携協定:Economic Partnership Agreement)外国人介護福祉士候補生」であり、公益社団法人の国際厚生事業団が行っている、外国人(現在はインドネシア、フィリピン、ベトナムの3国)の方が介護福祉士の資格を求めて、日本で就労しながら勉強をする取組です。平成24年度から開始されており、2,000人程の応募者のなか、候補生になれるのは300人程度。なかなかの狭き門です。

わが法人では平成27年度より開始しており、現在では8名のインドネシアの方が、特別養護老人ホームで働いています。今回は、そんな頑張っているメンバーのなかで、取組開始2年目に入職した、第2期生のアストリ・ジュリアンティさん、ニアガ・サリ・ベビさんの二人にインタビューをしてみました。

(写真右:アストリ・ジュリアンティさん、左:ニアガ・サリ・ベビさん)

 

――まずはめざすきっかけから。どうしてEPA候補生になろうと思ったの?

アストリ・ジュリアンティ(以下、アストリ):私は日本の「ドラえもん」を見て、それで日本で働きたいと思いました。

ニアガ・サリ・ベビ(以下、ベビ):日本人は真面目だから、一緒に働いて見習ったら、イケイケになれると思って。あと、日本語をもっと勉強したくて。

 

――ドラえもんと、イケイケに(笑)。面白い理由だけど、じゃあ実際来て、仕事をしてみて大変だと思ったことは?

ベビ:介護の仕事はインドネシアにはないです。だから、介護の仕事は初めてで大変です。

 

――インドネシアには介護の仕事がないの?

ベビ:インドネシアでは家族がおじいちゃんおばあちゃんの面倒を見ます。こういう、施設のようなものはないです。ずっとお家ではおばあちゃんたちと一緒だったので、ちょっと寂しいです。

 

――ホームシックかな?

ベビ:ホームシックちょっとあります(笑)。

 

――他にはある?言葉の壁、とか。

ベビ:日本語はやっぱり難しいので、喋るのが苦手です。だから、自分の意見が言いづらいです。

アストリ:日本語学校で習った日本語と、方言はちょっと違うから。

 

――方言は難しいもんね(笑)。アストリさんはそれ以外で何かある?

アストリ:お風呂の時に、浴槽がインドネシアにはないので、どうすればいいのか難しかったです。

 

――浴槽はないの?シャワーだけ?

アストリ:そう、シャワーだけあります。浴槽はないです。だから、手順がよくわからなかったです。

 

 

 

――やっぱりいろいろと文化が違うんだね。じゃあ、そんななかでも日常生活や仕事上で気を付けてることはある?

ベビ:利用者さんが怒ってる時、やっぱり方言でいろいろ言われます。そういう時は「なにがあったの?」とか「どうしたんですか?」とか、簡単な言葉で何度か理由を聞きます。それでも言葉がわからない時は、他の人に尋ねます。

 

――利用者さんの訴えをしっかり聞くのは【傾聴】するってことで、すごくいいね。日常生活で気を付けていることはあるかな?

ベビ:よくテレビとかで日本の人はラーメンを美味しそうに食べてます。でも、私は食べれないです。

 

――そっか、ムスリム(イスラム教徒)だから食べられないのか。そしたら、普段の買い物も大変だよね?

アストリ:スーパーで買うときも、何が入ってるかしっかり見ます。こう、裏っ返して……。

 

――成分表?(笑) 何が入ってるかなーって?

アストリ:そうです(笑)。あと、ごみ捨てのときも大変です。

 

――ごみ捨て?

アストリ:インドネシアは毎日そのまま捨てるだけです。日本は曜日、時間、何を捨てるか決められてるから気を付けないと。

 

――ゴミの分別はインドネシアではしなくていいんだね。

アストリ:はい。だから、朝が大変です(笑)。

 

――ここまで大変なことばっかり聞いたから、今度は楽しい話しようか(笑)。楽しかったことや嬉しかったことは何かあった?

アストリ:利用者さんは、昔の話をよくしてくれます。「昔はこんなものはなかった」とか。地元の話や、本人の話とか。それが面白いです。

ベビ:お花見に行ったことも楽しかったです。利用者さんは毎日同じ生活して、単調な毎日が続いています。でも、お花見に行ったときは楽しそうな、いい笑顔を見せてくれました。それと、利用者さんは物忘れが多いです。一緒に探すと「ありがとう。あなたは優しいね」と言われました。役に立てたと思うと、とても嬉しかったです。

 

――いい経験をしてるね。楽しかったことと言えば、二人は今年結婚したけど、恋バナを少し聞いてもいいかな (笑)。彼とはどこで出会ったの?

アストリ、ベビ:日本語学校で(笑)。

 

――どっちから声を掛けたの?

アストリ、ベビ:彼からです(笑)。

~暫し詳細に恋バナをしてもらう~

――いいなぁ(笑)。旅行とかも行ってたよね?どこが一番楽しかった?

アストリ:神戸や大阪、京都も行きました。新婚旅行で行った沖縄は自然がいっぱいで、とても綺麗でした。

ベビ:私も神戸と大阪と京都に行きました。京都は日本の文化がたくさんだったので、とてもよかったです。

 

――なるほど。しっかり日本を楽しんでもらったみたいだけど、そんな日本の印象はどう?来る前と来た後で変わったかな?

アストリ:日本の冬の写真を見て、とても綺麗で楽しみにしてました。でも、実際は寒いだけでした……。

 

――雪景色が見たかったのかな(笑)。ここら辺は降らないもんね。

アストリ:はい。あと、日本の交通機関はみんなお辞儀を丁寧にしてくれます。そんなことはインドネシアではなかったので、びっくりしました。

 

――日本の礼儀に対する丁寧さは凄いよね。ベビさんは?印象変わったかな?

ベビ:祖母から「日本人は厳しくて怖い」と言われていました。でも、来たらみんな優しくて、印象が違いました。

 

――それは良かった。じゃあ最後に、今後めざしていきたいことはある?最終的にはどうなりたい、とか。

ベビ:日本語を勉強することをめざしていたので、やっぱりもっと日本語が上手になりたいです。できれば、日本語能力試験(※)に受かって、日本で看護師さんになりたいです。

 

――ベビさんは看護師さんをめざしてるんだね。介護のこともわかる看護師さんは、きっと強みになると思うよ。じゃあ、アストリさんは?

アストリ:私も日本語能力試験に合格して、介護福祉士の資格をちゃんと取りたいです。それで、インドネシアで介護施設を作りたいです。

 

――インドネシアには施設がないって言ってたもんね。それは、すごく大きくて素敵な夢だと思う。二人ともめざしてるものは大変だけど、頑張ろうね!

 

と、いう訳で、カッコイイ夢に向かって頑張る二人のインタビューでした!

 

インタビュー中も、何度か正しい意図で話が出来ているかを確認する場面が実はありました。そんな言葉の壁がある地で、懸命に夢へと向かう日々。ホームシックや上手くいかないこと、また宗教上で難しいことが多々あるなか、EPA候補生の人たちは利用者さんの笑顔を嬉しいこととして頑張っています。利用者さんに感謝してもらえる、人の役に立って嬉しい、それは、国が違っても共通です。

仕事に勉強に、それから恋も(笑)。彼女たちは毎日大変です。それでも、その頑張りがいつか実を結び、日本の社会福祉の精神が、世界中へと伝わっていくのは、そう遠くない未来なのかもしれません。

※ 日本語能力試験……日本語を母語としない人を対象にした、日本語能力を測定し認定する試験のこと。これがあると、学校での単位・卒業資格認定や、企業での優遇、社会的な資格認定など、様々なメリットがあります。

 

 

 

 

やまちゃん
岡山県やすらぎ福祉会・泉寿の里・事務

古本屋、アシスタントデザイナー等、社会福祉に全く関係のない職種から、縁あって社会福祉法人へと籍を置くことに。
事務職ではありますが、現場の皆さんの頑張りをお伝えしたく、参加を決意しました。猫が好きです。
休日にはアイドルを追いかけてみたりもしています。尊い猫やアイドルと同じく、尊い事業だと思います。そんな素敵な社会福祉の今をお伝えできれば嬉しいです。
岡山市内で特別養護老人ホーム等をしています。
http://senjunosato.com/

古本屋、アシスタントデザイナー等、社会福祉に全く関係のない職種から、縁あって社会福祉法人へと籍を置くことに。
事務職ではありますが、現場の皆さんの頑張りをお伝えしたく、参加を決意しました。猫が好きです。
休日にはアイドルを追いかけてみたりもしています。尊い猫やアイドルと同じく、尊い事業だと思います。そんな素敵な社会福祉の今をお伝えできれば嬉しいです。
岡山市内で特別養護老人ホーム等をしています。
http://senjunosato.com/

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