社会福祉HERO’S

いっそのこと子ども食堂ではなく“地域食堂”で!
~千葉県佐倉市の“ともいき(共生)”プロジェクト エピソードⅠ~

社会福祉な「まいにち」

千葉県 執筆者 ハヤ☆タク 2019.10.11

「オレはいいんだよ。みてるだけで。」

地域食堂プレオープンの日。開催時間少し前に来て、会場外のベンチに座ってそう話す地域住民のSさん。しかし、このSさん、食堂がオープンすると、いつの間にかホールのテーブルに座り、地域のお友だちと談笑しながら、カレーを頬張り、さらには「一曲歌おうか」とカラオケで会場を盛りあげてくれました。

これは、社会福祉法人愛光が昨年11月28日に開催した地域食堂“ともいき”のほんのひと場面です。

私は千葉県佐倉市の社会福祉法人愛光の総務部で働く“ハヤ☆タク”です。今年で勤続10年目と、ようやく二桁。昨年までは障害者施設の現場で直接的支援を行っていました。今回この「ひとりひとりが社会福祉HERO’S」の活動に参加し、社会福祉の魅力を少しでも多くの方に知ってもらえたらと思っています。

愛光は60年前に視覚障害児の支援からスタートし、現在は千葉県佐倉市を中心に、子どもから高齢者まで、全世代にわたり総合的な福祉のサービスを提供する社会福祉法人です。

近年、福祉のトレンドとして、たびたび話題になっている「地域共生社会」という言葉。愛光では、これまでにも経営理念に「地域への貢献」を掲げ、「共に支える 共に生きる」ことに取り組んできました。

「共(とも)に生(いき)る」このワードから「AIKOH(愛光)ともいきプロジェクト」として、改めてさまざまな事業を実施しています。そのなかの1つ“子ども食堂”ではなく、“地域食堂”についてご紹介いたします!

今回このプロジェクトを進めるにあたり、法人内より数名の職員が集いました。

ボランティアや熟年層に精通している地域福祉センターの所長。次に佐倉市山王地域を中心にフィールドワークを行っている地域包括支援センターの所長。ホームヘルプサービス担当の主任。また児童関係の担当として学童保育所の職員。当法人で過去に栄養士として調理を担当していた職員。そのほか有志で集ってくれた職員が数名いました。

まずは分科会を行い、それぞれの得意分野から話を進めました。そんななか、山王地域の中心的住民にボランティアを依頼。また、地域の郵便局長さんが趣旨に賛同してくれて話し合いに加わってくれました。

そのようなプロジェクトメンバーで会議を重ねていくと1つの課題が見えてきました。それは愛光のある佐倉市山王地区は、子どもの数より、高齢者の数が多いことでした。小学校のクラスも年々少なくなり、住民も熟年層や高齢者層が増え、働き盛りの30代~50代は共働きで、山王地区の日中は比較的閑散としている様子もありました。

私たちはもともと、子ども食堂として考えていました。しかし、このエリアの現状からすると「子ども食堂」と限定する必要があるのか?という疑問に変わりました。

とくに貧困層の救済が必要なわけではない。むしろ住民間での付き合いの希薄化や、異年齢間での交流といった、タテヨコのつながりが少ない。その強化こそがこの地域のニーズではないか?と考えるようになりました。

「いっそのこと“子ども食堂”と限定せずに、みんなで集まれる“地域食堂”にしよう!子どもも、大人も、高齢者も、障害者も、みんな集まれる食堂にしよう!』必然とそう考えるようになっていきました。

これが“こども食堂”ではなく、“地域食堂”となった経緯です!

当日は、事前にボランティアさん(地域の主婦の皆さま)に呼びかけ、調理や配膳、洗い物などをお願いしました。

調理担当の3名のボランティアさんは、カレーの食材、サラダ、フルーツポンチを準備します。その量70人分。3名とも黙々と皮をむき、カットカット。淡々とこなして、30分程で野菜を切り終えた。なんと頼もしい後ろ姿か。まさに包丁をもたせた三銃士のようでした。

時間になると、続々と地域の方が集まってきました。やはり最初は熟年層が多く、最初はどこに座ろうかと見渡す様子もありましたが、すぐにお友だちを見つけ、輪に入っていきました。そんな時、うまいことパイプ役になるのが、顔の広い郵便局長さんでした。

「○○さん!こんばんは!」と声をかけると、「あら!局長さんもお手伝いしているの?」と表情が一気に和らぎました。

郵便局長さんは住民の交友関係にも精通しているようで、「お友だちの△△さんはあそこのテーブルにいますよ」と的確に導いていました。

こんなに頼もしいコンシェルジュはいないと思いました。

カレーが出来上がり、配膳します。車椅子の旦那さんを押してこられた奥さんは、カレーを食べながら旦那さんに声かけます。

「おとうさん。来てよかったですね」旦那さんは「そうだね」素朴な返事だったが、顔はとても優しい顔でした。

学童保育所の子ども(14名程)が来ると、場は一気に明るくなりました。

「いただきまーす!!」

高齢の方がたから笑顔が溢れます。子どもたちのその明るさが嬉しいようでした。

冒頭に紹介したSさんのカラオケを筆頭に、子どもたちが続けて歌を披露。小学校の校歌と「世界に一つだけの花」など数曲を合唱してくれました。

最終的には、参加者50名、ボランティア17名と予想以上の大盛況。自然と場は温まり、みんなの心が繋がったように見えました。

これは後日学童保育所に届いたいくつかの声です。

○ある高齢者は子どもたちが校歌を歌いだした時に、「この校歌は開校して間もない山王小学校初代校長が癌で入院中にベッドの上で、歌詞を書いたのよ。でも卒業生を見送る前に亡くなられたの。だから私たちには思い入れのある校歌なの」と思い出話を語ってくれました。

○ある母親からは「一人ぼっちで泣いているのかとドキドキと心配して来ました。けれど皆と楽しそうに歌っている姿が見られて良かった」と安心してもらえたようでした。

今回の取組は、まだプレオープンであったため、今後反省点などを洗い出し、話し合いを重ね、改善し、3月からは本格オープンで月1回のペースで開催しています。

地域共生の形はその地域に合わせたものでなければならないと感じています。

そこには地域の人びとの思いや、工夫が求められてくるでしょう。いまはまだ“愛光としての地域食堂”でありますが、これが回数を重ねていき、ボランティアさんの思いや工夫が反映され、形が変わっていき、最終的には地域に根づかせていきたい。

「今日は食堂がある日だね!」そんな言葉が聞こえてくる“地域食堂”を私たちは願っています。

「ともいき」は約100年前に唱えられていた仏教用語で、「すべての存在は単独で成り立つのではなく、関わり合いによって成り立つ」という考えが由来となっています。

愛光の考える「ともいき」は「支える側、支えられる側」という関係性ではなく、誰もが「共に支えあい、共に生きる」社会の実現だと考えています。

わたしハヤ☆タクは今後も「AIKOH(愛光)ともいきプロジェクト」のさまざまな活動を紹介し、どのように変わっていくかを報告したいと思います。ぜひ注目してください。

ハヤ☆タク
千葉県社会福祉法人 愛光

入社10年目。今年度より現場から総務部に異動し、広報誌の担当などをしております。福祉の現場からさまざまなことを発信し、いろいろなことを知ってもらいたい。そんな思いで参加しました。現場で発信できないことを、ぼくが代わりに発信します!
若輩者ですが、よろしくお願いいたします!

入社10年目。今年度より現場から総務部に異動し、広報誌の担当などをしております。福祉の現場からさまざまなことを発信し、いろいろなことを知ってもらいたい。そんな思いで参加しました。現場で発信できないことを、ぼくが代わりに発信します!
若輩者ですが、よろしくお願いいたします!

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