『あの人がいると楽しい』そう思ってもらえる介護士になりたい。
先輩・同僚インタビュー
鹿児島県 聞き手 KW 2019.03.26
みなさん、はじめまして。鹿児島県いちき串木野市にある社会福祉法人照島会(てるしまかい)のKWです。照島会は、①特別養護老人ホーム、②短期入居生活介護(ショートステイ)、③通所介護(デイサービス)、④居宅介護支援事業、⑤在宅介護支援センターの5つの事業を展開しています。
福祉業界は、異業種から転職してきた人の割合が、他業界のそれよりも比較的大きいように感じます。「社会福祉HERO’S」で既に紹介されている方がたのなかにも、前職が異なる業界だった方がいらっしゃいますよね。例にもれず、私の勤務する社会福祉法人を見回してもそうです。
今回はそのなかの1人にスポットライトをあて、なぜ福祉の仕事を選んだのか、その動機やきっかけなどを伺いたいと思います。インタビューを受けていただいたのは、介護福祉士としての経験を積んだ後、製菓業でパティシエとして活躍、その後再び福祉業界にUターンしてこられたTMさんです。
―まずは自己紹介をお願いします。
TMさん:生まれも育ちも鹿児島県いちき串木野市です。高校卒業後、医療技術専門学校の社会福祉学科に進み、介護福祉士の資格を取りました。
―高校生だったときに、既に介護福祉士になろうと決めていたのですね。何かきっかけがあったのでしょうか?
TMさん:高校生の頃、祖父が入院していました。そこで介護のお仕事をされている方と出会い、世のなかにはこのような仕事もあるのだと初めて知りました。おそらく看護助手さんだったと思うのですが、その方たちの働く様子を興味深く観察しました。排泄の介助をしているところも見ました。綺麗にしてもらった後、「ありがとう」と言う祖父の喜んでいる姿がとても印象に残りました。
実はその頃、将来の進路としては調理師の道を希望していたのですが、祖父の面会で病院を訪れるたびに介護の仕事にも魅力を感じるようになりました。どちらに進むか迷いましたが、祖父のあの嬉しそうな表情と「ありがとう」という言葉がいつまでも頭から離れられず、最終的に介護福祉士の道を選びました。
―そして専門学校に進み、卒業と同時に介護福祉士の資格を取られたわけですね。
TMさん:卒業してすぐに介護老人保健施設でのキャリアがスタートしました。その施設は70床ありました。いまいるユニット型(1ユニット10名)の特別養護老人ホームと業務の進め方は異なる部分もありますが、介護の仕事という点では共通しています。
―しかし、4年ほど勤めた後、製菓業へ転職されました。それはなぜですか?
TMさん:当時、私は20代前半でした。高校の頃は調理師の仕事にも興味を覚えていました。いろいろな世界を見てみたい、いろんな経験をしてみたい。チャレンジするなら若いうちだと思うようになったのです。
製菓業は、資格がなくても従事することはできますが、3年勤務すると製菓衛生師の受験資格が得られます。当時の介護福祉士の資格と同じですね(*注)。私もそれで製菓衛生師の資格を取得しました。
そこには8年間勤務しました。最初は和菓子部門の助手として働き、その後、洋菓子部門へ異動してパティシエとしてケーキ類をつくっていました。
―8年というと、かなりのキャリアですね。それなのに、介護の仕事に戻ってこられた。それはなぜでしょうか?
TMさん:ひとつには、お休みの面で折り合いがつかなくなったことがあります。結婚して子どもも生まれたのですが、子どもの成長に沿ったイベントなどに、なかなか合わせづらくなってきていました。
仕事と家庭の間(はざま)で揺れていたとき、ふと蘇ってきたのが、介護の仕事をしていた頃に出会った方がたの「ありがとう」の言葉と、それを言われたときの喜びでした。とくに普段、なかなか笑顔を見せない方が微笑んでくれた時の嬉しさはたとえようもないほど大きなものです。それから、当時の祖父の顔。いろいろなことが、次から次へと思い起こされてきました。「また、介護の仕事に戻ろう」と思ったのも自然の成り行きでした。
―そして現在に至るわけですが。
TMさん:特別養護老人ホームに勤務して2年5か月近くになります。ここは1ユニット10名のユニット型ですが、ゆったりとした時間が流れています。一人ひとりのご利用者に目配り・気配りができます。
また、ユニットリーダーをはじめとするユニットの職員も頼もしくて楽しい人ばかりです。去年のクリスマスは、ユニットでクリスマスパーティを開いて楽しく過ごしました。
―そういえばクリスマスパーティではサンタクロースに扮していましたね。余興にロシアンルーレットや二人羽織もされていました。また、先日のホーム全体で行った節分の豆まきでは青鬼役を引き受けていただき、大変盛り上がりました。他にも、パティシエの腕を活かして、ご利用者の目の前でケーキ作りのデモンストレーションをされたこともあります。介護のお仕事以外にも活躍する場面がたくさんありますね。
TMさん:ケーキ作りのデモンストレーションは、こちらに入職してすぐの頃でした。当時は恥ずかしかったし、果たして自分でよいのか、自分に務まるのかとても心配でした。でも皆さんの笑顔を見ていくうちに、やって良かったと思えてきました。
いまではどんなことでも楽しんでやっています。ご利用者の笑顔をいかに引き出すかがカギです。
―お休みの日はどのように過ごされていますか?
TMさん:家族と外出することが多いです。いま、上の子が小学校1年生、下の子が4歳なのですが、彼らの帰宅を待ってどこかへ出かけることもしょっちゅうです。子どもの成長って、本当に早いです。言葉を覚えるのもとても早い。そんな言葉、どこから覚えてきたの?と驚かされてばかりです。
―ご家族と楽しく過ごされている様子が目に浮かびます。きっと子煩悩で優しいお父さんなのでしょう。TMさんは柔和な雰囲気をお持ちですからね。
TMさん:でも実はすごい負けず嫌いな性格なんですよ。
―え!そうですか?普段お仕事をしている姿からは、とてもそのようには見受けられませんが・・・。
TMさん:(笑)。たぶん、負けず嫌いだからこそ、常に穏やかでいるようにしているのかもしれません。困っているところを見せたくないというか。高校時代まで野球をしていたので、もともと勝負意識が強いのだと思います。それは仕事面でも同じです。「競争」「勝ち負け」とは少し異なりますが、同期や同年代の仲間からは常に抜きん出ていたいと思っています。
―ライバルや目標とする先輩たちがいるからこそ、自分自身も成長できるというわけですね。意欲と闘志に燃えているTMさんの、今後の目標をお聞かせください。
TMさん:ご利用者から「あの人がいると楽しい」「あの人に手伝ってもらって良かった」と言ってもらえる介護士になりたいです。また、職場の先輩や仲間からも、「この人に来てもらえて良かった、助かった」と思われる職員をめざしています。そして、いろんな資格に挑戦したいです。いずれはケアマネジャーの資格取得も考えています。
―最後に、福祉の仕事をめざしている方、どうしようか迷っている方へメッセージをお願いします。
TMさん:私は一度福祉の世界を離れました。一定期間距離を置いていたからこそ、見えてきたもの、気づいたことがあります。介護士の仕事をしていると言うと、必ず「大変でしょう?」と言われます。ですが、自分の対応によって、ご利用者からの反応をダイレクトに受け取ることができます。それは言葉だけに限ったことではありません。表情や身振り、わずかな目の動きなどさまざまです。ご利用者の反応(気持ち)をその場で体感できるわけですから、やって良かったと思うことはあれ、大変だとかイヤだとかはあまり感じません。むしろ、達成感の方が大きいです。
特別養護老人ホームに入居されている方がたは人生における大先輩です。その方たちがいたからこそ、いま、ここに自分たちがいます。安全で平和な暮らしを送ることができるのも、大先輩がしてこられたご苦労のおかげです。
ご利用者のほとんどが、ここで最期を迎えられます。人生の幕引きという最後の大仕事を、感謝の気持ちをこめてお手伝いさせていただいています。このような責任感を伴う大きな仕事・役割を任せてもらえるのが、介護士としての大きな魅力ではないでしょうか。
福祉の仕事は、これからますます必要とされる、のびしろのある分野です。その拡がりは無限大です。最初は慣れないことばかりで戸惑うかもしれません。でも、焦らず丁寧に接し続けていけば、ご利用者も心を開いてくださいます。是非一緒に働きましょう!
―TMさん、有難うございました。
<インタビュー後記>
TMさんには人生のターニングポイントが2回あります。1回目は高校時代、2回目が製菓業に従事していたときです。そして、福祉の世界へとTMさんの背中をポンと押してくれたのは、いずれもお祖父さまが言われた「ありがとう」の言葉と笑顔でした。また、当時お祖父さまの介助をされていた看護助手さんとの出会いも見逃せません。その方との出会いがあったからこそ、現在のTMさんがあるのです。福祉の仕事に携わる(携わっていた)1人の存在が、新しい社会福祉HERO’Sを誕生させた瞬間です。あなたも新・社会福祉HERO’Sの一員になりませんか?
*注)現在は「実務経験3年以上」だけでは受験できません。受験資格取得ルートの詳細は随時ご確認ください。
KW
鹿児島県社会福祉法人照島会 副施設長
大学卒業後、民間企業(金融)での勤務を経て2016年に入職しました。全く異なる業界からの転職に
当初は戸惑うばかりでした。しかし今では、社会福祉の仕事がもつ多種多様な可能性にワクワクしたり、それぞれの専門性を活かしながら働く方たちの姿に圧倒されたりと、新たな発見や驚きの日々を過ごしています。
この思いを皆さんにお伝えしたくてライターに応募しました。
趣味は下手の横好きで続けているフラメンコと、読み始めるとすぐに寝落ちしてしまう読書。
社会福祉法人照島(てるしま)会 http://chofuen.terushima.com/
大学卒業後、民間企業(金融)での勤務を経て2016年に入職しました。全く異なる業界からの転職に
当初は戸惑うばかりでした。しかし今では、社会福祉の仕事がもつ多種多様な可能性にワクワクしたり、それぞれの専門性を活かしながら働く方たちの姿に圧倒されたりと、新たな発見や驚きの日々を過ごしています。
この思いを皆さんにお伝えしたくてライターに応募しました。
趣味は下手の横好きで続けているフラメンコと、読み始めるとすぐに寝落ちしてしまう読書。
社会福祉法人照島(てるしま)会 http://chofuen.terushima.com/