社会福祉の事務室は、小学校の時の保健室みたい!? 障がい者支援の事務スタッフ日記①
社会福祉な「まいにち」
奈良県 執筆者 エミリー 2019.02.22
はじめまして、エミリーです。
福祉の現場のスタッフというと、ご高齢の方を介護するスタッフや障がいのある人を支援するスタッフをイメージされる方が多いと思います。
でも、私の仕事は事務職で、職員の採用とか育成・定着が担当です。うちの法人では“人材養成”と呼んでいます。
この仕事、毎日、失敗や上手くいかないことを含めていろいろな経験をして、いくつもの気づきがあって、昨日の自分がとても幼く感じられるんですよ。この仕事に就いてから、一日があっという間に過ぎます。
事務室職員。経営企画室と総務課の職員が机を並べています。
私が働いているここ青垣園では、毎日いろんなドラマがあり、ご利用者がそれぞれの思いを伝えに事務室に来られます。介護や支援を担当する職員ではなく事務職員という、日常の詳細を知らない私たち・・・事務室は駆け込み寺とか相談所・・・?小学校や中学校時代の保健室のような感じになっているのかも??
詳しくお話しを聴かせていただくと施設ご利用者、職員がお互いの関わりや支援を通して、それぞれ成長していることに気づきます。
『人は生涯成長する』って、ほんとうに思えるんですよ!
こんな私からは、事務室での出来事や私が館内で出会うさまざまなシーンなどを日記のようにして、皆さまにご紹介させていただきます。
今回は、ある秋の日の事務室での出来事をご紹介します。
○月○日
お昼過ぎの事務室では、事務スタッフそれぞれのキーボードの音だけがカタカタと響いていました。
すると突然、事務室のドアがバァーン!と開きました。私たちはその音に驚いて一斉に顔を上げました。
満面の笑みのTさん。彼は軽度の知的障がいがあって、60才くらいかな。
「オレ、覚えたゾ!!」
「・・・。」
私たちは、まだ様子がつかめず、声も出ません。
彼は、とても得意げに、さらに大きな声で言いました。
「おいっ!たなか!!」
「誰かを呼ぶときは、“さん”を付けましょうね。」と、事務職員の誰かが言いました。
Tさんは、シャツの左胸のポケットから手帳をサッと出して眺めました。そして、
また別の人に向かって「おまえ、どれだ?」
と、ニッコリ。その声は、とても嬉しそうに聞こえました。
でも実は私、そのときTさんの笑顔とは全く反対のことを思っていたんです。
「おいっ!」も「おまえ」も「呼び捨て」も、Tさんがこの施設に来るまでぞんざいな扱いを受けてきたのではないかと私に思わせたんです。
とても明るく、ものすごく元気で、素直というか・・・まっすぐなTさん。
彼の笑顔を見ていたら、ここに来るまでの彼のことがとても気の毒に思えて、胸がギュッと痛くなりました。
でも、いつまでも続きそうなTさんの笑顔が私をホッとさせました。
青垣園の救護施設に入所したばかりのTさんは、玄関ホールでしばらくの間とても不安気にキョロキョロと辺りを見回していました。
私はその時ことを思い出すたびに、Tさんがここに来てくれて良かったと思います。
そして、Tさんの笑顔を見るたびに、こうして出会えたことを嬉しいと思うんです。
毎日、少なくとも2回は事務室にやって来るTさん。私には大したことは何もできないけれど、彼の笑顔を大切にしたいと思っています。だから、もしもTさんが、
「おいっ!理事の皆さんよぉっ!」
って、言ってもなんとか…たぶん大丈夫。
担当支援員にTさんのことを少し詳しく教えてもらいました。
「Tさんは、ここに来るまで段ボール加工の工場で長年働いていました。素直で明るく、誰とでも仲良く出来て、誰にでも優しくできる方。大切にしている手帳に名前が書かれている方は、みんな友だちなんだそうですよ!
入所されてすぐくらいから、館内清掃と下膳の仕事をされています。とても熱心!!
配膳の仕事をしているTさん。人のためにする仕事が好きとのこと。ずっと微笑んでいます。
お掃除中のTさん。すみずみまでていねいに掃除してくれます。
「Tさんの働く環境を整えるために、職員は働く時間や休憩時間をタイマーセットしています。ていねいに働いている姿を見ていると、Tさんの“仕事のやりがい”を大切にしよう!って、思います。2週間に一度、市立図書館で韓流ドラマのDVDを観るのが趣味というか、楽しみにされていて。図書館に行く日を頻繁にたずねられますよ。」
Tさん、ラジオ体操は指先までピーン!です。
ちなみに、すこし前からTさんは話す相手のお名前に“さん”を付けています。
救護施設地域交流センタ―ホール壁面。一人ひとつのダルマを作っていただきました。Tさんは創作活動もテキパキ!時間内に2つ完成!しかも、ご本人にとてもそっくり!!
事務室は、さまざまなご利用者と事務職員がコミュニケーションを取る憩いの場?になっています。お話しして癒されるのは、ご利用者だけでなく私たちも。
保健室みたいにこっそり立ち寄って、ちょっとホッとできる事務室から社会福祉な毎日を皆さまにお届けします。
障がい者支援の事務スタッフ日記、つづく。
エミリー
奈良県社会福祉法人青垣園
人材養成・管理栄養士・産業カウンセラー。社会福祉との出会いはデンマークでの授業。病院勤務を経て留学、一旦家庭に入り子育中に心理学を学ぶ。医療業界に復帰したが、縁あって2012年より現在の職場に管理栄養士として勤務し、2014年現職に異動となる。これまでの経験から、障がいがあるために身体や言葉などで表現できなくても、一人ひとりの心は動き思いがあると信じています。記事の中では、施設ご利用者が成長していく様子や人間性が磨かれ成長していく職員の様子を書きたいと思います。私が勤務している社会福祉法人はこちらです。https://www.aogakien.jp/
人材養成・管理栄養士・産業カウンセラー。社会福祉との出会いはデンマークでの授業。病院勤務を経て留学、一旦家庭に入り子育中に心理学を学ぶ。医療業界に復帰したが、縁あって2012年より現在の職場に管理栄養士として勤務し、2014年現職に異動となる。これまでの経験から、障がいがあるために身体や言葉などで表現できなくても、一人ひとりの心は動き思いがあると信じています。記事の中では、施設ご利用者が成長していく様子や人間性が磨かれ成長していく職員の様子を書きたいと思います。私が勤務している社会福祉法人はこちらです。https://www.aogakien.jp/