社会福祉の事務室は、小学校の時の保健室みたい! 障がい者支援の事務スタッフ日記④
え、 A さんが失踪!?
社会福祉な「まいにち」
奈良県 執筆者 エミリー 2020.09.04
なぜか、いつも絵本の中の王子様のようなスタイルで新聞を熟読するA さん。新型コロナウイルス関連記事に 興味があるようです。
事故の後遺症があり、救護施設で暮らす40代の男性Aさん 。前施設での暮らしでは無断外出が何度か あったそうなのですがご本人にその記憶は全くありません 。いつの間にか公用車の運転席に座っていたり、サイドミラーの角度をグニャっと変えたり、搬入された 大きな 荷物を部屋に運ぼうとしたり、植木を 素手で引き抜こうとしたり。でも、記憶にはありません。彼にはポロシャツを着るときは必ず、ボタンを2つはずして襟を立てる ちょっとおしゃれなこだわり?習慣があります。
Aさんは、いつもどこかに目的を見つけ、そこへ向かって進みます。
今日は、Aさんとのエピソードをご紹介します。
○月○日
私が勤める青垣園でAさんが暮らしはじめてから数日後、Aさんが所在不明になってしまいました。
ほかの利用者さんの刺激にならないように配慮しながら、数名の職員が館内と外(敷地内)をあちらこちら探しましたが見つかりません!!
私がほかの棟へ向かう途中、Aさんの後姿を発見!!
「Aさん、どちらにおいでですか?」
と、声をかけるとAさんは、
「いえ、僕のことはいいんです。」
と、私に軽くほほえんでくれました。
そして、みんなが待っている救護施設へ向けて“クルッ”と方向転換。二人で話をしながら、一緒に廊下を歩き、自室へ戻りました。
間もなくして、救護施設の管理職員がAさんと私を見つけて駆け寄って来ました。
私が二人の会話を報告したところ、上司が驚いて私に一言、
「口説かれてるやん!!えっ!?まさか気づいてへんの!?」
そういえばAさん「よかったら今度一緒に~」って、言っていたような・・・。そうなの!?
Aさんがどこを(何を)目指していたのかは不明です。そして、Aさんは全く何事もなかったかのように過ごされました。
Aさんの担当支援員に話を聞いてみました。
「Aさんは、話しかけると笑顔で返してくれたり、真剣な顔をされたり、困った顔などさまざまな表情を見せてくれます。リアクションから気持ちを読み取ったりして、勉強になりますよ。整理整頓はなかなか聞き入れてもらえませんけどね・・・。
ここでたくさんの人と関わりながら、気持ちよく暮らしてもらえたらいいと思っています。」
Aさんのように
“今を生きる”
大切なことですよね!
Aさんが大切にしているスカジャン。親切なAさんは、私にほほ笑みながらわざわざ着てくれました。
エミリー
奈良県社会福祉法人青垣園
人材養成・管理栄養士・産業カウンセラー。社会福祉との出会いはデンマークでの授業。病院勤務を経て留学、一旦家庭に入り子育中に心理学を学ぶ。医療業界に復帰したが、縁あって2012年より現在の職場に管理栄養士として勤務し、2014年現職に異動となる。これまでの経験から、障がいがあるために身体や言葉などで表現できなくても、一人ひとりの心は動き思いがあると信じています。記事の中では、施設ご利用者が成長していく様子や人間性が磨かれ成長していく職員の様子を書きたいと思います。私が勤務している社会福祉法人はこちらです。https://www.aogakien.jp/
人材養成・管理栄養士・産業カウンセラー。社会福祉との出会いはデンマークでの授業。病院勤務を経て留学、一旦家庭に入り子育中に心理学を学ぶ。医療業界に復帰したが、縁あって2012年より現在の職場に管理栄養士として勤務し、2014年現職に異動となる。これまでの経験から、障がいがあるために身体や言葉などで表現できなくても、一人ひとりの心は動き思いがあると信じています。記事の中では、施設ご利用者が成長していく様子や人間性が磨かれ成長していく職員の様子を書きたいと思います。私が勤務している社会福祉法人はこちらです。https://www.aogakien.jp/