障がい者支援施設のナイスキャラ#2「かっちゃん」
社会福祉な「まいにち」
栃木県 執筆者 さにー 2020.02.20
「障がい者支援施設のナイスキャラ」も二回目となりました。
今回紹介したい利用者さんは「かっちゃん」です。かっちゃんは私がこの施設に異動になり一番衝撃を受けた利用者さんです。何故、衝撃的だったかというと・・・
「かっちゃんは止まれない」
そう、かっちゃんは「止まらない」のです!
医務室へ行く際、廊下を歩いているといつもタタタッと小走りしているかっちゃんに遭遇します。何回かは背中にかっちゃんが突進、そして去って行かれます。私はその度に声をかけますが、かっちゃんはチラッとだけ私を見てまた小走りで去って行くのです。一度、止めてみたらどうなるのかと疑問に思い、かっちゃんを止めてみましたが「うおおおおーん!」と泣かれ、すごい力で手を振りほどき、また去って行きました。
そんなかっちゃんが止まる時はあるのか。かっちゃんと相思相愛なM支援員のお話を聞きつつ、かっちゃんの生活にフォーカスしたいと思います。
「かっちゃんと食事」
かっちゃんは中年期ですが、身長140㎝程の小柄な男性です。そのため全ての臓器が小さく、食事は喉の通りがいいようにミキサー食で少量ずつ食べます。かっちゃんは食事の時間が近づくと、食堂のドアに張りつき「おおーん!」と声を出しながらドアを叩きます。そして、食堂のドアに近い席に座って様子を見て、ドアの周りをうろうろ歩き、またドア叩くことを繰り返します。そのくらい食事はかっちゃんにとっての楽しみなのです。
食事の時間になると一目散に食堂をめざし、職員の手をグイグイ引いて入場します。食事介助を受けながらですが、毎回完食します。しかし、胃袋も小さいかっちゃんは満タンになるのもすぐです。そして止まれない男ですから、すぐ席を立ちます。そうなると吐き戻してしまうのです。しかも走りながら吐いてしまうこともあり、かっちゃんを追いながら床拭きをすることになります。
かっちゃんも分かっているのか、ちょいちょい振り返えりつつ、やっぱり走り去って行くのです。
「かっちゃんとはんてん」
かっちゃんは冬になるとはんてんを着ます。かっちゃんははんてんが大好きで、洗濯に出していると職員の手を引きながら「はんてんを着せろー!」と猛アピールします。そして、綺麗になったはんてんを着せると「えっへっへ」と満足そうな顔をします。その顔がとても可愛くて、はんてんもとても似合っているので私のなかでは冬の風物詩の一つになっています。ちなみに一度着せると、よっぽど嬉しかったのかしばらくその職員の後をついて回ります。活動(畑作業など)に行くときもはんてんを着たがるので、職員たちに「これから活動だから違う上着にするよ」とたしなめられています。
「Going my way」
かっちゃんが大好きで、そしてかっちゃんに愛されているM支援員に「かっちゃんってどんな人だろう…?」と聞いてみたところ、思い浮かんだのはこの言葉「Going my way」だそうです。かっちゃんは我が道を突き進んでいるそうです。
食事の準備が始まる時間になると、かっちゃんは自分の席でなく、一番食堂が見える位置へ移動します。そして前述したようにドアの前をうろうろしたり、バンバン叩いてみたり…。「そんなに確認したいならどうぞ」と食堂へ招待しますが、「まだ準備終わってない!」とまた席に戻ります。準備が終わらないと食堂には入らない、ある意味ちゃんと待てる律儀な男なのです。もしかしたら、バンバンとドアを叩くのは「早く用意してね!」と言っていたのかもしれません。
夕食後の余暇時間は、止まれないかっちゃんでもリラックス…。しかしその場所はまたまた自分の席ではなくほかの利用者さんの席。夕食後はだれも座らないと知っているので15人席を独り占めします。その時のかっちゃんは目をつむって「にぃ~んまり」満足そう。
かっちゃんの至福の時間です。
「破壊的な笑顔」
かっちゃんはどんなことを考えているのだろう…。M支援員をはじめ支援にあたる職員はそう思わずにはいられません。日頃は人を寄せつけず、感心もなく我が道を堂々と歩むかっちゃん。職員から介助を受けた後はタタタッとやはり走り去って行きますが、その後振り返り「えっへっへ」と笑います。
はんてんを着せた時もそうですが、この笑顔は「気持ちよくしてくれてありがとう」と言ってくれているのだと思います。
そのふいに見せるかっちゃんの笑顔の可愛さったら破壊的で、どの職員もメロメロになります。M支援員いわく、10代の頃の胸キュンか、母性本能を鷲掴みされたかのような気持ちになるそうです。
「この仕事をしていてよかった」「もっと頑張ろう」
言葉がなくても、かっちゃんの笑顔にはこんなにもパワーをもらえるのです。
さにー
栃木県社会福祉法人あいのかわ福祉会
那須共育学園 看護師
美容業界を目指していたはずが何故か看護師に。両親と姉に言われるがまま実家の社会福祉法人に勤めたけれど、今は利用者さんのトリコ!!高齢者・障がい者・児童、ジャンルにとらわれない福祉のナースを目指して奮闘中です。楽しい利用者さんと過ごしている毎日を知って頂きたくて参加しました。休日はゆったり美術鑑賞かライブで汗を流すという真逆なことをして楽しんでいます。夢は面白い高齢者のエピソードを綴った本「年寄りという生きもの」を出したい!今は自分の祖母から情報収集をしています。最近一番笑ったエピソードは、風呂に柚子ではなく柿があったことです。
社会福祉法人あいのかわ福祉会のHPはこちら→three-ai.jp
美容業界を目指していたはずが何故か看護師に。両親と姉に言われるがまま実家の社会福祉法人に勤めたけれど、今は利用者さんのトリコ!!高齢者・障がい者・児童、ジャンルにとらわれない福祉のナースを目指して奮闘中です。楽しい利用者さんと過ごしている毎日を知って頂きたくて参加しました。休日はゆったり美術鑑賞かライブで汗を流すという真逆なことをして楽しんでいます。夢は面白い高齢者のエピソードを綴った本「年寄りという生きもの」を出したい!今は自分の祖母から情報収集をしています。最近一番笑ったエピソードは、風呂に柚子ではなく柿があったことです。
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